以下の3社は本誌を参考にしてください。

【ロイヤルカナン】

【ヒルズ】

【ピュリナ】

その他の主なメーカー

【ファルミナ/Farmina】

① 企業概要とブランド哲学

ファルミナ(Farmina Pet Foods)は、イタリア・ナポリに本社を構えるプレミアムペットフードメーカーで、2008年に科学的栄養研究を導入して以来、急速に国際展開を加速しています。

ブランドスローガンは、「Happy Pet, Happy You」
自然由来の素材と科学的に設計された栄養バランスの両立を目指しています。

ファルミナは独自の哲学として、
✅ 人間用と同等レベルの食品素材(Human Grade)
✅ 遺伝子組み換え原料・人工防腐剤不使用
✅ 原材料産地のトレーサビリティ
を厳格に遵守しており、“ナチュラルであること”と“科学的に安全であること”を両立した設計思想が際立っています。日本における輸入管理は、日本全薬工業株式会社(本社:福島県)です。

② 日本市場での展開と位置づけ

日本では、2020年代に入ってから本格的に流通が拡大し、高級志向の飼い主層やナチュラル志向の愛犬家・愛猫家の間で認知が急上昇しています。

ブランドライン

特徴

N&D(Natural & Delicious)

🐶🐱

主力シリーズ。グレインフリーおよびアングレイン(低GI)に分かれ、犬猫別・年齢別・目的別に細分化

Vet Life(療法食)

🐶🐱

動物病院専用ライン。腎臓・肝臓・消化器・アレルギーなどの疾患に対応。処方の根拠を明示

「デザイン性の高いパッケージ」と「食いつきの良さ」も評価されており、嗜好性と栄養性のバランスを高く保った製品として評価されています。③ 科学的根拠と臨床連携へのこだわり

ファルミナは、イタリア・ドイツ・イギリスの大学研究機関と共同研究を行いながら、すべての製品を獣医師監修のもとで設計・臨床テスト済としています。

特に療法食「Vet Life」シリーズでは:

  • 各疾患に対する推奨栄養設計の根拠(文献や試験データ)を公開
  • 独自の“腸内環境サポート設計(Prebiotic Mix)を導入
  • 合成酸化防止剤・BHA・BHT・エトキシキン不使用

④ 今後の展望とポジショニング

ファルミナは、以下のような方向でさらなる展開が期待されています:

  • 動物福祉と栄養科学の両立  → 放牧飼育やクリーン原料の使用を明示し、消費者の倫理意識にも応える
  • パーソナライズ栄養設計  → 年齢・犬種・疾患・活動量に応じたセミオーダー提案(アプリ連携含む)
  • 腸内フローラ研究・マイクロバイオーム対応  → 消化器疾患・皮膚疾患との関連にフォーカスした新しい機能性シリーズの拡充

⑤ まとめ

ファルミナは、イタリア生まれの“ナチュラル × サイエンス”を体現するプレミアムブランドです。
「自然由来」だけに頼らず、「科学的に設計された自然派」であることが、他ブランドとの差別化ポイントと言えるでしょう。日本市場では、療法食とプレミアム総合食の両輪での拡大が今後のカギとなります。

ヒデ先生から一言

「“科学的ナチュラルフード”という立ち位置を、ここまで一貫して設計しているブランドは極めて珍しい」。ファルミナは単に“ナチュラル”をうたうのではなく、合成酸化防止剤を一切使用せず、小麦も古代小麦(スペルトなど)を用いるなど、原材料の選定にも独自の哲学が貫かれています。

このようなアプローチは、他の療法食ブランドにはあまり見られない特色であり、近年、日本国内でも売上が急速に伸びている背景のひとつと言えるでしょう。

ファルミナの本質は、いわゆる“感覚に訴える自然派”ではなく、理論に基づいて構築された“ナチュラル・サイエンス”という新しい路線。

臨床現場の医療者としても、こうした一貫した思想に非常に好感が持てます。

今後ロイヤルカナンやヒルズに続く「“第三の選択肢”としての存在感」が高まっていくことが予想されます。

ペットライン株式会社

① 運営母体とブランド概要

ペットライン株式会社(PETLINE Inc.) は、日本国内における総合ペットフードメーカーの一つであり、特に犬猫用のドライフードやウェットフード、療法食などを手がける国産メーカーとして知られています。

同社が展開する「ドクターズダイエット」シリーズは、1990年代からスタートした獣医師専用フードブランドであり、日本の臨床現場に根ざした療法食として長年支持されてきました。

ブランドの理念は、

「獣医師による、獣医師のためのフード開発」
国内の大学病院や臨床獣医師と協働しながら、実際の診療現場のニーズを反映させた設計思想が根底にあります。

② 製品ラインと特長

シリーズ名

特徴

ドクターズダイエット(総合栄養食)🐶🐱

健康維持・成長期・高齢期・避妊去勢後など、ライフステージ別の国産総合栄養食。嗜好性・栄養バランスを両立

ドクターズケア

(療法食)🐶🐱

尿石症・腎疾患・消化器・皮膚疾患・肥満・糖尿病など、病態別に対応した日本仕様の療法食シリーズ

 📌特に「ドクターズケア」は、日本の犬猫の疾患傾向・食習慣・体格を考慮した調整がなされており、海外ブランドにはないきめ細かな処方設計が特徴です。

③ 国産療法食ならではの強み

日本国内の臨床ニーズにマッチした処方

  • 日本猫に多い「ストルバイト尿石」へのpH管理(猫用ストルバイトケア)
  • 小型犬の消化器トラブル・便秘傾向に合わせた繊維設計(消化ケア・ファイバーケア)
  • 和食ベースの嗜好傾向に合わせた素材配合 → 高い嗜好性

安定した供給とトレーサビリティ

  • 原材料・製造ともに国内管理
  • 全国の動物病院・卸ルートで安定供給
  • 食品レベルの品質管理を徹底した自社国内工場での一貫製造

④ 今後の展開と注目ポイント

  • 栄養設計の細分化:現在は標準的な処方中心 → 将来的にはステージ別/併発疾患対応の深掘りへ
  • 腸内フローラやアレルゲン対応製品の開発
  • 病院連携アプリや定期供給体制の強化(サブスク)
  • 国産プレミアムの差別化強化:国産ならではの原材料トレーサビリティと食材ストーリーの明確化

⑤ まとめ

ドクターズダイエット/ドクターズケアは、日本の臨床現場において30年以上の歴史を持つ国産療法食の草分け的存在です。

派手なプロモーションよりも、“診療現場の声に応える実直な製品設計”に徹しており、「海外ブランドに頼らない選択肢」を求める獣医師・飼い主にとっては、今後も非常に重要なポジションを占めると考えられます。

ヒデ先生から一言

「日本の臨床現場における“かゆいところに手が届く”処方設計。これは国産メーカーだからこそできる強みです。」

食いつきに困る症例や、海外製品で反応が悪いケースにおいても、ドクターズケアで改善する例を多く経験しています。