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ペットフードの選ぶにあたって大切な事は、「健康」、「喜び」、「継続」です。

この3つの要素、「健康」、「喜び」、「継続」は、しばしば相反する特性を持っているから3つ全ての要素を満たすのが難しいのです。

「トリレンマ(trilemma)」とは、もともとは経済用語で、3つの望ましい目標のうち、同時にすべてを満たすことができない状態を指す概念です。

健康 vs ② 喜び の両立

健康設計と嗜好性は、設計上トレードオフになりやすい

ペットフードの設計において、「健康」と「嗜好性(=喜んで食べてくれること)」の両立は、しばしばトレードオフの関係になりやすい傾向があります。

一般的に、療法食に代表される健康志向のフードは、低塩分・低脂肪・薄味など、栄養バランスを重視した設計がなされており、その結果として「今までのフードに比べて食いつきが悪い」という現象が起こりやすくなります。

一方で、嗜好性を優先したフードでは、食欲を刺激するために添加物を加えて柔らかく仕上げたり、アミノ酸や糖類などを添加して味やうま味を強調したりすることが一般的です。また、タンパク質量を増やす傾向も見られますが、これらは必ずしも健康的とは限りません

 

健康 vs ③ 継続 の両立

高品質な原材料や製造には、それ相応のコストがかかります。

これは人間の食品でも同様で、たとえば無農薬野菜、オーガニック食材、産地が明確な食材など、健康に配慮した商品は一般的な商品よりも高価になる傾向があります。

このバランスは、最終的に飼主(オーナー様)の価値観や意識に強く依存します。どこまで「健康のために投資できるか」、どこで「現実的な継続可能性」を選ぶか。家庭環境や収入、ペットとの関係性などによって判断は分かれます。

さらに、“健康によい=必ずしも食べやすい”とは限らないのが現実です。塩分や香料、脂質を抑えた高品質なフードほど、嗜好性が低くなる傾向があり、「せっかく高いフードを買ったのに、食べてくれない…」という事態も珍しくありません。

喜び × ③ 継続 の両立

ペットがフードをよく食べてくれるのは喜ばしいことですが、その“喜び”は多くの場合、トッピング・香料・脂質・ウェットタイプなど、強い嗜好性への依存によって支えられています。

特に、嗜好性の高いフードやおやつを日常的に与え続けると、一般的なドライフードや療法食など、健康的な食事への移行が困難になることがあります。
「これしか食べない」「食べるまで待ってしまう」といった“食の偏り”が無意識のうちに形成されてしまうのです。

また、ドライフードに比べてウェットフードは価格が高く、保存性も低いためコストと手間がかかりやすいのが実情です。さらに、嗜好性を追求した商品には添加物が多く含まれていることもあり、食べてくれる反面、長期的には健康を損なうリスクもはらんでいます。

 

この3つの視点(①健康、②嗜好性、③継続可能性)のうち、どれに重きを置くかは飼い主様次第です。大切なのは、これらのバランスをペットの健康状態やライフステージ、そして飼い主様の考え方に応じて見極めることです。

その変化に合わせてフードを柔軟に見直すことが重要であり、本書では『ペットフード 最高の教科書』では、4段階の食事管理という独自の方法を通じて、その判断軸をご案内しています。

ペットがどんなフードを好んで食べるかは本当に様々です。だからこそ本書では、「味のレビュー」や「口コミ評価」といった主観的な情報にはあえて頼らず、成分や原材料といった客観的なデータをもとに、獣医学的な視点でフードを選ぶ考え方をご紹介しています。