メーカー:ロイヤルカナン

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◆ 原材料名

肉類(鶏、七面鳥)、コーン、植物性繊維、超高消化性小麦タンパク(消化率90%以上)、小麦、コーングルテン、加水分解タンパク(鶏、七面鳥)、動物性油脂、チコリー、魚油(オメガ3系脂肪酸源)、サイリウム、マリーゴールド、アミノ酸類(DL-メチオニン、タウリン、L-カルニチン)、ミネラル類(Cl、K、Na、Ca、P、Zn、Mn、Fe、Cu、I、Se)、ビタミン類(A、D3、E、C、ナイアシン、パントテン酸カルシウム、B群、葉酸、ビオチン)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリーエキス)


◆ 商品概要

「ロイヤルカナン 猫用 ニュータードケア」は、避妊・去勢手術後の猫が抱えやすい体重増加および尿路環境の変化に配慮して設計されたフードである。手術後は基礎代謝が低下し、食欲が増す傾向が知られているため、本製品は適度にカロリーを調整し、満腹感を維持しやすい食物繊維を配合している。また、ミネラルバランスを調整することで、ストルバイトやシュウ酸カルシウムなど下部尿路結石の形成リスクを抑え、尿路の健康維持をサポートする設計となっている。動物性タンパクは鶏・七面鳥由来が中心で、加水分解タンパクを使用することで消化性にも配慮。タウリン、メチオニン、魚油(EPA/DHA源)など、猫が必要とする必須栄養素も補われている。ロイヤルカナンの医療栄養ラインに属する製品で、獣医師の指導下で選択されることを想定した食事設計である。


◆ 評価

原材料については、主要タンパク源として鶏・七面鳥が明示されている点は透明性が高い。一方で、炭水化物源としてコーン・小麦が使用されており、動物性原料の比率は特段高くはないものの、このカテゴリー(術後管理フード)としては一般的な構成といえる。栄養設計については、避妊・去勢後に重要となる体重管理と尿路配慮が両立されており、術後〜成猫期の生活に適したバランスである。ミネラルバランスの調整(特にMgやPの管理)は、猫に多い下部尿路リスクを想定した妥当な処方と考えられる。ただし、高齢期の腎臓ケアまでを直接目的とした設計ではなく、シニア猫では別フードへの切り替えが必要となる場合もある。安全性に関しては、ロイヤルカナンの製造および品質管理体制により一定の信頼性があり、酸化防止剤や油脂の品質管理も標準的。コストはプレミアム帯であるが、医療栄養製品としての位置づけを考えると極端に高いわけではない。企業姿勢は、栄養学に基づいた一貫した製品開発が評価できる。

◆ 5項目評価

項目 評価 理由
原材料 ★★★☆☆ 鶏・七面鳥由来の動物性タンパクが明示されており透明性はあるが、コーン・小麦など穀物も多く、いわゆる「肉主体フード」とまでは言いにくい標準的な構成。
栄養設計 ★★★★☆ 避妊・去勢後に問題となりやすい「体重管理」と「下部尿路配慮」を同時にカバーする設計で、目的は明確。成猫〜中年期の術後管理フードとしてはバランス良好。
安全性 ★★★★☆ ロイヤルカナンの品質管理体制に加え、酸化防止剤の使用やミネラルバランス調整など、脂質・尿路への配慮は一定水準と評価できる。ただし高齢猫・腎疾患用ではない。
コスト ★★★☆☆ 一般市販フードより高めの価格帯だが、医療栄養フードとしては標準〜やや高め程度。長期継続には家計との相談が必要。
企業姿勢 ★★★★★ 獣医療向け療法食ラインを長年展開し、研究開発・情報提供・サポート体制が世界的に確立しているメーカーとして、信頼性は非常に高い。

 

◆ 総合評価:★★★☆☆(3.65)

◆ ①原材料に関するコメント

ロイヤルカナンの最大の長所は“配合目的の明確さ”だが、原材料の質だけを見ると、必ずしもプレミアムフードの最上位グレードとは言えない。主要動物性タンパクは鶏・七面鳥と明示されているが、穀物としてコーンや小麦が多く含まれており、肉比率が高い「ハイプロテイン系」ではない。特にコーン・小麦・コーングルテンが複数順位で登場する点は、“動物性メインのフードを求める層”にとっては物足りなさが残る。また加水分解タンパクは消化性の点では優秀だが、「何の副産物が使われているのか?」という透明性を重視するオーナーからは賛否が分かれやすい。とはいえ、避妊去勢後の体重管理目的フードにおいては、極端な高タンパクよりも“バランス優先”が合理的であり、構成自体はこのカテゴリーとして標準的。ただし、原材料から“プレミアム”を期待すると少し肩透かしを感じる可能性がある。


◆ ② 栄養設計に関するコメント

栄養設計としては、避妊・去勢後の肥満リスクと尿路問題という“2大リスク”に対応しており、目的は非常に明確。一方、実際の臨床では「術後に太りやすい猫は本当に太りやすい」ため、標準的なカロリー調整だけで十分かは個体差が大きい。高繊維で満腹感を維持する設計は合理的だが、多頭飼育や食欲旺盛な猫では“食べる速度が遅くなるだけで量は減らない”ケースもある。また尿路配慮(Mg・Pなどのミネラル設計)は評価できるが、「結石体質の猫」には専門療法食の方が適しており、本製品はあくまで“術後の一般的リスクへの対応”に留まる。全年齢対応ではなく成猫向けであるため、高齢化に伴う腎臓負担やタンパク代謝の問題まではカバーできない。したがって「長期的にこのフードだけで一生過ごす」設計ではなく、あくまで避妊去勢後~中年期の“特定用途フード”として捉えるべきである。


◆ ③ 安全性に関するコメント

安全性の面では、ロイヤルカナンの製造基準は安定しており、品質管理・トレーサビリティは他社と比べても高い。しかし、穀物主体である以上、油脂酸化のリスクや、結石体質の猫での「Mg・P・尿pHのコントロールが本当に適しているか」は個体差が大きい。ミネラルバランスは“平均的な猫”を想定した設計であり、泌尿器疾患を繰り返す猫や慢性腎臓病との併発症例では、このフードに頼りすぎることは推奨できない。また、酸化防止剤として天然トコフェロールを使用している点は評価できるが、原材料構成上、油脂の鮮度管理がより重要となる。製造管理は高いが“原材料の質そのもの”はトップレンジではないため、「猫が長期的に摂る食品として安全性は十分か?」という視点では、臨床的には“目的限定型のフード”として使うのが適切。結局のところ、安全性はメーカーの品質管理の高さで補われている側面が強い。


◆ ④ コストに関するコメント

価格帯は療法食クラスに近く、1kgあたりの単価としては中〜やや高め。避妊去勢後の体重管理フードとしては内容が優れているものの、「フードの原材料構成自体は標準的」であることを考えると、コストパフォーマンスをどう感じるかはオーナーの価値観によって大きく分かれる。また、猫は一生のうちのかなり長い期間で腎臓・尿路疾患のリスクがあるため、途中でフードを変更せざるを得ない場面が訪れることが多い。つまり、本製品は“長期でずっと買い続けるタイプのフードではない”ため、継続コストを前提に設計されたフードではない点に注意が必要である。さらに、多頭飼育の場合は体重差や活動量差により、1袋の消費量が大きくなり、コスト負担がさらに増す。最終的には「術後〜成猫期」という限定的な期間に投資するフードと割り切るなら妥当だが、“価格に対して原材料が特別に優秀なわけではない”点は押さえておく必要がある。


◆ ⑤ 企業姿勢に関するコメント

ロイヤルカナンは世界最大級の獣医療向け療法食メーカーであり、研究開発力・情報提供・獣医との連携は他社を圧倒している。この点は間違いなく「企業姿勢 ★5」で妥当である。しかし辛口で見るなら、巨大企業ゆえの弱点も存在する。まず、製品ラインナップが非常に多いため、一般オーナーが“どのフードを選ぶべきか分からなくなる”問題がある。また、療法食ラインの強みが大きい反面、原材料のプレミアム性では小規模高品質メーカー(例:オリジン、アカナ、ヒルズ一部製品など)に比べて劣る場面もある。さらに、国内の価格変動が大きく、輸入コストや市場調整の影響を受けやすいこともデメリット。一方、学術データの提供、獣医師向けセミナー、臨床支援など“サポート体制”は他社を凌駕しており、信頼性は非常に高い。総合的に見て「品質管理=強い」「原材料の高級志向=普通」というバランス型メーカーと言える。

◆ ⑥付記

犬用と異なり、猫用には合成保存料(ソルビン酸カリウムなど)の使用が見られず、天然由来の酸化防止剤のみで構成されている点は評価できる。
このため安全性評価は犬用よりも一段階高く位置づけられる