商品名:ロイヤルカナン ニュータードケア 犬用(避妊・去勢後の体重管理)
メーカー:Royal Canin(ロイヤルカナン)
参考価格:1kg 約3,000〜3,500円前後(Amazon実売)
※ ㎏単価:約3,000円台で、療法食としては標準的なレンジ。


◆原材料名

大麦、コーン、豚タンパク、肉類(鶏、七面鳥)、小麦粉、植物性繊維、超高消化性小麦タンパク(消化率90%以上)、加水分解タンパク(鶏、七面鳥)、動物性油脂、チコリー、魚油(オメガ3系不飽和脂肪酸(EPA+DHA)源)、大豆油、サイリウム、フラクトオリゴ糖、マリーゴールド、アミノ酸類(DL-メチオニン、L-リジン、タウリン、L-カルニチン)、ゼオライト、ポリリン酸ナトリウム、ミネラル類(Cl、Na、K、Ca、Zn、Mn、Fe、Cu、I、Se)、ビタミン類(コリン、E、ナイアシン、C、パントテン酸カルシウム、B6、B2、B1、葉酸、A、ビオチン、B12、D3)、保存料(ソルビン酸カリウム)、酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリーエキス)

◆ 商品概要

ロイヤルカナン「ニュータードケア 犬用」は、避妊・去勢後の犬が抱えやすい体重増加や代謝変化に配慮した総合栄養食です。去勢後はエネルギー消費量が低下する一方で食欲が増す傾向があるため、本製品ではカロリー密度を適度に抑えつつ、満腹感を維持しやすい食物繊維やたんぱく質バランスを整えた設計になっています。公式情報では、筋肉量の維持に必要なたんぱく質の確保、脂肪分の適度な調整、尿路ケアへの配慮など、複数の健康項目を総合的に支えることが特徴とされています。ロイヤルカナンが長年蓄積してきた研究データを背景に、避妊・去勢後の犬の一般的な栄養ニーズに対応した商品として位置づけられており、日常的な体重管理を目的に多くの動物病院でも取り扱われています。サイズ展開が豊富で、犬種や体格に合わせた選択がしやすい点も特徴の一つです。


◆評価

ニュータードケアは、避妊・去勢後の犬が抱えやすい体重増加に対し、エネルギー密度と満腹感のバランスを考慮した設計がなされており、臨床現場でも一定の評価を得ています。高たんぱく・低脂肪の構成は筋肉量の維持と体重コントロールの両立を狙ったもので、適切に使えば体重管理の一助になると考えられます。一方、主原料には主に穀類や植物性タンパクが含まれており、動物性タンパク質を重視するフードと比較すると原材料の質に対して好みが分かれる可能性があります。また、ロイヤルカナンは多くの科学的研究を背景に持つ一方、添加物の使用や加工度の高さについては気になる飼い主もいるため、選択には価値観が反映されやすい製品です。価格は療法食としては標準的で継続しやすく、供給安定性や臨床データの豊富さは企業としての強みです。全体として、避妊・去勢後の犬の一般的な栄養管理に適したフードであり、体重管理の基盤を整えたい家庭に広く利用しやすい選択肢となります。


◆5項目評価

評価項目評価理由(中立表現)
原材料★★★☆☆穀類を主体とするが、療法食として目的に沿った構成であり、消化性・一貫性は評価できる。動物性たんぱくが主原料ではない点は好みが分かれる。
栄養設計★★★★☆避妊・去勢後の代謝変化に合わせたエネルギー調整と満腹感サポート。研究データに基づいた合理的設計。
安全性★★★☆☆透明性の高い品質管理、工場公開、科学的根拠に基づいた製造体制。添加物の使用はあるが、管理基準は高い。
コスト★★★☆☆療法食として標準価格。継続しやすいが原材料のプレミアム性は高くない。
企業姿勢★★★★★研究施設・科学データ・臨床連携・展示会での情報公開など業界トップクラスの姿勢。

総合評価:3.45 / 5.0(中程度)

(注意)本書で示す評価基準は「一般食」を対象としております。
本製品は準療法食に分類されるため、一般食基準を適用すると、本来の特性とは異なる観点で減点される場合があります。

 

評価をご覧になる際は、あわせて本書の「グレインフリーでは療法食は作れない」の項目をご参照ください。

 


◆詳細

◆① 原材料に関するコメント

ニュータードケアは、主原料に穀類を使用しており、肉類を中心としたプレミアムフードと比較すると動物性タンパクの割合は高くありません。しかしこれは“減点対象”というより、療法食系列のロイヤルカナンが採用する「消化性の安定」「ロット差の少ない原料」「体重管理に適したエネルギー密度」を優先した結果とも言えます。ただし、穀類主体の原材料構成は、近年の“高タンパク・低炭水化物志向”の飼い主にとっては物足りなく映るのも事実です。また、原材料に記載されている「家禽ミール」などは、部位の特定が難しく透明性の面ではプレミアムフードに劣ります。一方で、企業が厳格な品質基準を持ち、長年にわたり同じ処方で安定供給しているため、臨床現場での使用実績という観点では安心できる点も多いフードです。総じて「原材料の質より栄養設計と再現性を優先したフード」であると言えます。

◆② 栄養設計に関するコメント

ニュータードケアの栄養設計は、避妊・去勢後に起こりやすい「食欲増加」と「代謝低下」の両方を考慮した構造になっています。高タンパクで筋肉量を維持しつつ、脂質は控えめ、さらに繊維を増やして満腹感を持続させる設計は、確かに体重管理に理論的です。しかし課題もあります。ロイヤルカナンの特性として、栄養設計の“理由”は明確に説明されるものの、その配合量や効果の程度は完全に公開されておらず、ユーザーは「メーカーの情報を信頼して使う」構図になりがちです。また、犬の個体差によっては繊維量の多さが便質の変化や栄養吸収に影響することもあり、万能ではありません。さらに、脂質が低めに設定されているため、活動量の多い犬にはエネルギー不足になる場合もあります。栄養設計は目的特化で優れている一方、“万人に最適なフード”ではなく、あくまで「体重管理が必要な子に絞った専門フード」である点を理解して使う必要があります。

◆③ 安全性に関するコメント

ロイヤルカナンは世界的企業の中でもトップクラスの品質管理体制を持ち、工場公開や展示会で安全性をテーマに発信するなど透明性は高い部類に入ります。しかし、加工度の高さや合成添加物の使用には一定の議論があり、“ナチュラル志向の飼い主”からの評価は分かれます。ミール類や加工デンプン、酸化防止剤などは一定の基準内で安全に使用されていますが、「完全無添加のフードと比べてどうか」と言われると、やはり好みの差が出る部分です。また、高温高圧での押し出し製法は栄養素の損失リスクがあるため、ビタミン類の再添加が必須となります。これは療法食としては一般的ですが、“素材本来の栄養を残す”タイプのフードとは方向性が異なります。とはいえ、ロイヤルカナンは製造ロット間の品質ブレが少なく、世界基準の検査体制を持つ点で安全性は高く、信頼性の高い製品です。“安全性=添加物ゼロ”ではなく、“管理体制の厳格さ”を重視するユーザーに向いています。

◆④ コストに関するコメント

ニュータードケアの価格は 1kg 3,000円台と、療法食カテゴリーでは標準的です。しかし、近年のプレミアムフード市場では肉類主体・グレインフリー・機能性原料などを強調したフードが増えているため、比較されると「原材料構成のわりに高く感じる」場合があります。価格の中には、ロイヤルカナンが持つ研究開発費・製造管理体制・臨床データへの投資が含まれており、“科学的裏付けを買う価格”と言えるでしょう。そのため、原材料の豪華さや自然志向を求める飼い主にとっては費用対効果が見えにくい一方、体重管理という明確な目的のある犬には十分価値があります。注意点として、継続が前提となる体重管理フードであるにもかかわらず、価格が安いとは言い難いため、家庭の経済負担が無視できません。また、サイズによって㎏単価が大きく変動するため、賢い買い方をしなければ割高になることもあります。

◆⑤ 企業姿勢に関するコメント

ロイヤルカナンの強みは、企業姿勢にあります。世界規模の研究施設を持ち、臨床現場からのフィードバックを製品化に活かす体制、定期的な獣医師向けセミナー、展示会での安全性や製造工程の公開など、業界トップクラスの透明性を誇ります。一方で、「ミール主体で添加物を使うフードを科学的に正当化している」という批判も一部に存在します。企業としては“目的に対して最適化された栄養設計”を最優先しており、その姿勢は一貫していますが、自然素材志向のユーザーとは価値観が大きく異なります。また、販売チャネルが動物病院・専門店に寄っているため、マーケティングの一部に“専門家推薦バイアス”が生じると感じるユーザーもいます。それでも、品質管理の公開性と研究姿勢は業界随一であり、“科学に基づくフードを提供する”という企業方針は揺らいでいません。