- 商品名:和漢みらい ドッグフード 総合栄養食「長寿」幼犬・成犬用(7歳以下) など(※シリーズ複数あり)
- メーカー:自然の森製薬(和漢みらい)
- 価格(参考):通常購入で 1kgあたり 約 6,600円(税込)
◆原材料名
生肉(鹿,馬,魚),大麦,玄米,国産雑節,サツマイモ,菜種油,煎り胡麻,米ぬか,和漢サプリ粉末【ユーグレナ(ミドリムシ),オルニチン,セルロース,イヌリン,白豆杉,フランス海岸松,紫イペ,スリッパリーエルム,ネムノキ,菩提樹,田七人参,朝鮮人参,霊芝,アガリクス,冬虫夏草,チャーガ(シベリア霊芝),ハナビラタケ,プロポリス,アンゼリカ,DHA,亜麻仁,クコの実(ゴジベリー),ウコン,当帰の葉,ケイヒ,菊花,八角,紅花,シロキクラゲ,メシマコブ,山伏茸,マイタケ,オトギリソウ,タモギタケ,クランベリー,ノコギリヤシ,ノニ果実,菊芋,クマザサ,アスタキサンチン,ケロッコパウダー,クロガリンダ,板藍根,桑の葉,山薬,ローヤルゼリー,甜茶,アロエベラ,黒豆,ドクダミ,ガジュツ,ウコギ葉,大麦若葉,吉野葛,カミツレ,陳皮,ツリガネニンジン,サラシア,延命草,大棗(ナツメ),ハトムギ,ウラジロガシ,ギョクチク,グアバ葉,ギムネマ葉,ゴカヒ,MSM,コーンシルク,スピルリナ,ザクロ,甘茶,バイキセイ,カノコソウ,麻(ヘンプ),ブルーベリー,緑イ貝,コラーゲン,モリンガ,生姜,サンザシ,ガラナ,サンシシ,ハス胚芽,キャッツクロー】,海藻(フコイダン),サチャインチオイル,トルラ酵母,乳酸菌,オリゴ糖/卵殻カルシウム,ビタミン類(B群,A,E,K,コリン),グルコサミン,アルギニン,ロイシン,イソロイシン,バリン,リジン,メチオニン,タウリン,ミネラル類(亜鉛,銅)
◆商品概要
和漢みらいドッグフード「長寿」は、肉類(鹿肉、馬肉、魚肉など)を主たんぱく源としつつ、伝統的な和漢植物、発酵素材、穀類、野菜・芋類など多種多様な素材を組み合わせたドライフードです。公式によれば、犬の体のバランス維持、腸内環境の整備、免疫サポート、被毛・皮膚・関節など多方面の健康維持を狙った設計がなされており、かつ全体として総合栄養食としての基準をクリアしています。さらに、独自の“和漢・マクロビ”のコンセプトを取り入れ、漢方由来の植物、発酵食材、乳酸菌などを多く配合することで、飼い主にとっては「自然由来/手作り風」「人間の健康食に近い発想」のドッグフードという訴求がなされています。価格は一般的なドライフードより高めですが、原材料の多様性と“健康維持”の提案を前面に出したプレミアム系フードとして位置付けられています。
◆評価
和漢みらいドッグフードは、肉類・魚類に加え、多様な和漢植物や発酵食材、乳酸菌などを組み合わせた独自のコンセプトを持つフードです。素材の幅広さは魅力の一つであり、一般的な総合栄養食には見られない“自然素材の厚み”を打ち出しています。一方で、漢方医学の本来の考え方は、体質を丁寧に見極めて素材を選ぶ「個別処方」であり、全ての犬に同じ配合を与える市販フードとはアプローチが根本的に異なります。そのため、本製品に含まれる和漢植物が、体質によって適する場合・そうでない場合が出る可能性は考慮しておく必要があります。栄養設計としては総合栄養食の基準を満たしているものの、原材料が多岐にわたるため、各成分の寄与割合や消化性は判断しにくい側面があります。安全性については、保存料などの合成添加物を避ける姿勢は評価できますが、和漢素材の長期的な有効性や安全性については科学的エビデンスが限られています。価格は高めで、継続にはコスト面の負担が伴いますが、自然素材志向の飼い主にとっては一つの選択肢となり得るフードといえます。
◆5項目評価
| 評価項目 | 評価 | 理由(中立表現) |
|---|---|---|
| 原材料 | ★★☆☆☆ | 肉・魚を含む多様な原料構成だが、穀類・芋類など炭水化物も混在し、構成のバランスと情報の透明性がやや不明瞭。 |
| 栄養設計 | ★★☆☆☆ | たんぱく質・ビタミン・ミネラル・植物成分など幅広く配合。ただし成分の割合や消化性・代謝負荷の明示がないため、個体差で向き不向きがある。 |
| 安全性 | ★★★☆☆ | 合成保存料・着色料を避けた自然志向で、化学添加物への配慮は好ましい。ただし植物素材の安全性や長期影響の科学的裏付けは限定的。 |
| コスト | ★☆☆☆☆ | 価格は一般食よりかなり高め。品質と素材の多様性を考えれば妥当だが、継続コストは高く、コストパフォーマンスは中程度。 |
| 企業姿勢 | ★★☆☆☆ | 和漢・薬膳の視点をペットフードに持ち込み、差別化されたコンセプトを展開。透明性のある情報発信も見られるが、科学的エビデンスの提示は限定。 |
◆ 総合評価:2.05 / 5.0(中評価)
(原材料30%、栄養25%、安全性20%、コスト15%、企業姿勢10%)
◆特記事項:漢方の基本概念と和漢フードの位置づけ
漢方医学の基本は、個々の身体の“偏り”を見極め、その体質に合った処方を選ぶ「証(しょう)に基づく医療」である。診断には、望診・聞診・問診・切診の「四診」が用いられ、特に脈診と腹診は体内の状態を判断する重要な手がかりとなる。脈診では脈の強弱・速さ・深さ・張りなどを通じて、身体が「熱に傾いているのか」「冷えているのか」「体力が不足しているのか」「気が滞っているのか」などを読み取る。また、舌の色・形・苔の付き方、腹部の緊張や圧痛の有無なども重要な情報源である。漢方とは本来、これら総合的な情報からその個体の体質を把握し、熱証・寒証、虚証・実証、気血水の乱れなどを整理し、それに最適な生薬を選び組み合わせて処方する体系である。
このため、漢方は「特定の素材が健康に良いから使う」という単純な発想ではなく、「体質に合った素材だけを選ぶ」ことに本質がある。熱がこもりやすい体質の個体と、冷えやすい体質の個体では、同じ食材や生薬を用いることはない。むくみやすい個体と乾燥体質の個体でも処方は大きく異なる。つまり、漢方は“全員に共通の万能薬”という概念とは対極にあり、徹底した個別化を前提とした医学である。
一方、近年市販されている「和漢・薬膳ドッグフード」は、多様な和漢植物や発酵素材、生肉などを一つの製品に包括的に混合し、“体にやさしい”“未病ケア”といったイメージを訴求する傾向がある。しかし、漢方の原理に照らすと、万人(全犬)向けの共通処方という考え方は本来成立しにくい。また、体質が異なる犬に同じ和漢素材を与えることが必ずしも適切とは限らず、各素材の長期的影響や科学的根拠についてはまだ十分な検証がなされていない。和漢フードは健康志向の選択肢として魅力がある一方で、「漢方医学そのものとは異なる」「体質診断に基づくものではない」という点を理解して選択することが大切である。
【詳細】
◆① 原材料に関するコメント
和漢みらいの最大の特徴は、多種類の和漢植物・肉類・魚類・発酵素材を一度に大量配合している点です。しかし、これは見方を変えれば「何がどの程度入っているのかが非常に分かりにくい」という欠点にもなります。原材料数が極端に多いと、各成分の配合割合が不透明になり、どの原料が主で、どの原料が補助的役割なのか判断しづらくなります。また、和漢植物は素材としての魅力はあるものの、“体質に合うかどうか”が本来の漢方の大前提であるため、万人向けに混ぜ込むアプローチは医学的思想とはズレがあります。犬によっては、植物性エキスの種類が多いほど消化負担が増す可能性も否定できません。栄養学的に有効な原材料も含まれていますが、原材料の幅広さがそのまま品質の高さを意味するとは限らず、むしろ“何でも入れすぎて主軸が見えにくいフード”になっている点は慎重に評価すべきといえます。
◆② 栄養設計に関するコメント
和漢みらいは「全体の健康サポート」や「未病ケア」をうたう一方、その栄養設計は“良い素材を集めた総合フード”という印象が強く、科学的なバランス設計が明確とは言えません。タンパク質・脂質・食物繊維・微量栄養素が多方向に広がり、どの成分が主要な栄養源なのか見えにくい点が課題です。和漢植物や発酵素材は、補助的な機能として魅力はありますが、犬の栄養学における必須栄養素ではありません。配合量が明示されず、作用の強弱も判別できないまま「健康に良さそう」というイメージで使用されている側面が否めません。また、植物成分が多いことで腸内環境にプラスに働く場合がある一方、敏感な犬では逆に軟便・下痢・食欲低下を引き起こす可能性もあります。総合栄養食としてAAFCO基準は満たしているものの、“科学的な根拠に基づいた機能性設計”というより、“素材の多さで価値を補う設計”に近く、栄養設計としての一貫性は弱めです。
◆③ 安全性に関するコメント
和漢みらいは合成保存料や着色料を使用しない姿勢を掲げており、これは現代のナチュラル志向には合致しています。ただし、自然素材を多く使用するほど、逆に“素材ごとの安全性”や“長期的影響”の検証が難しくなるという問題があります。特に和漢植物は、古来より人の医療に使われてきたとはいえ、犬に対する安全性や作用量が体系的に研究されているとは言い難く、成分の種類が増えるほど予測しにくい反応が出る可能性があります。また、植物性素材が多いフードは、収穫時期のブレやロット差により品質変動が起きやすく、安定性の面では一般的なドライフードより課題が残ります。発酵素材や油脂についても、どのような管理体制で酸化や微生物リスクを抑えているのかが十分に開示されておらず、飼い主が安全性を“自分で判断する”には情報が不足しています。ナチュラル=安全ではなく、「原材料が多いほどリスク要因も増える」という視点が必要です。
◆④ コストに関するのコメント
和漢みらいの価格は、一般的なプレミアムフードを上回る高価格帯に位置し、1kgあたり6,000円前後というコストは継続性に大きな影響を与えます。原材料の豊富さや加工工程を考えればある程度妥当とも言えますが、実際のところ「素材数が多い=高品質」とは限らず、“価格に対して栄養価や機能性がどれほど上乗せされているか”は慎重に見極めるべきです。また、体質に合わない場合は、便の状態悪化や皮膚症状などで別のフードやサプリを追加する必要が生じることもあり、長期的にはコストがさらに増す可能性があります。高価格帯であるにもかかわらず、科学的なエビデンスや定量的データが十分に提示されていないため、“価格に対して情報の透明性が追いついていない”という印象は否めません。コスト負担に見合うメリットが得られるかどうかは、個体差による影響が大きく、万人に勧められる「投資価値の高いフード」とは言い難い側面があります。
◆⑤ 企業姿勢に関するコメント
和漢みらいを展開するメーカーは、和漢・薬膳・発酵といった独自の思想をペットフードに取り入れ、差別化された市場を築いています。しかし、マーケティング面では「自然素材=安全」「和漢=健康に良い」といったイメージに依存する部分が多く、科学的根拠の提示や作用機序の説明は限定的です。多数の素材を使用しているにもかかわらず、その配合量や働きを公開する姿勢は十分とは言えず、透明性の面で課題を残します。また、漢方本来の“体質に合わせた個別処方”という思想とは異なる商品設計であり、概念上の乖離を理解していない消費者も多いと考えられます。企業としては独自路線を貫いているものの、獣医師監修・臨床データの提示・第三者評価などの側面は強くなく、学術的な説明責任よりもブランドイメージを優先する印象があります。自然志向の飼い主には魅力的な提案ですが、専門家の視点からは「情報の開示」と「科学的裏付け」の強化が求められます。
